第1日目からの続き
(第2日目 岳沢ヒュッテ〜お花畑〜紀美子平〜前穂高岳〜紀美子平〜最低鞍部〜南稜の頭〜奥穂高岳〜ピッケルケルン〜穂高岳山荘 歩行時間:7時間30分)
午前4時、早出のガタゴトという音で目が覚める。
トイレのために外に出ると、稜線がくっきりと見える。
乗鞍スカイラインを登る車のヘッドライトが確認できた。
今日は天気が良さそうだ・・・。
午前5時朝食。
正しい日本の朝ごはんといったメニュー。
思いっきり4杯もお代わりをしてしまった・・・。
午前6時、岳沢ヒュッテを出発する。
西穂の稜線も朝日が当って綺麗だ。
岳沢を一気に登っていく。
バックには乗鞍岳、焼岳、そして御岳の雄姿が・・・。
お花畑を通過。
ついついカメラのファインダーを覗く回数が増える・・・。
急斜面に咲く色とりどりの高山植物に急登の辛さも暫し忘れる・・・。
岩のヘツリを慎重に登っていく。
鎖場も現れた・・・。
重太郎新道の核心部が近づいてきた・・・。
抜けるような青空の下、ぐんぐんと高度を稼ぐ。
岳沢のカールの緑が目に心地良い。
このような岩稜帯を歩くのは、一昨年の大キレット以来かもしれない・・・。
単調な登りにはない緊張感が嬉しい・・・。
重太郎新道の最後の鎖場を越え、紀美子平に着く。
ザックをデポし、空身で前穂の取り付きに挑むことにした・・・。
もの凄い高度感・・・。
とてもザックを背負って登れるルートではない。
紀美子平にザックをデポして正解であった・・・。
ふと横に目をやると、奥穂の向こうに槍ヶ岳の雄姿を望むことができた。
ピークが近づいてきた。
ここまで来ると岩登りの領域に近いような気がする。
午前9時30分、前穂高岳3090m山頂に立つ・・・。
山頂での景色を楽しもうとしたのも束の間、あっというまに山頂はガスに覆われてしまった・・・。
約30分程、ピークで小休止をし、紀美子平まで下りる事にした。
紀美子平からザックを背負い直し、吊尾根に向かう・・・。
ガスで視界が悪い・・・。
岩場の核心部は終わったと思ったのだが・・・。
吊尾根に入ってからも、岩のヘツリ部分は多かった。
奥穂からの縦走パーティーの通過を暫し待つことになる・・・。
ガスで視界が晴れない事もあり、いったい奥穂のピークまでどのくらいの地点に現在いるのか、まったく検討がつかなくなってきた・・・。
思ったようにペースが上がらない。
南稜ノ頭を越えた時点で午後1時を越えた・・・。
予定より1時間のオーバータイムだ。
ペースが上がらないのは、シャリバテに原因があるのかもしれない。
ピークで食べようと思っていた弁当を、登山道の脇で立ったまま食べる。
岳沢ヒュッテで作ってもらった胡桃の入ったおこわ飯。
疲れた身体では、ちょっと飲み込むのは苦しい。
水で流し込みながら無理やり食べる・・・。
ガスが段々と晴れてきた。
奥穂のピークが見える・・・。
午後1時30分、奥穂高岳3190m山頂に立つ。
大ケルンの上に立つ祠の前を通り、やっと展望盤の脇に腰を下ろしすことができた・・・。
この時点で北穂への縦走を諦めた。
山頂でゆっくりする事にしよう・・・。
ガスの切れ間からジャンダルムを望む。
天狗のコル方面への下降をするクライマーが見える。
立ち込めるガスが返って荘厳な雰囲気に感じるのは気のせいだろうか・・・。
カメラの望遠を使ってザイルワークを見物・・・。
眺望を楽しむことはできなかったが、日本第三位の標高を楽しみ、白出のコルへ向かう。
穂高岳山荘は近い・・・。
眼下に涸沢ヒュッテの赤い屋根が見えてきた。
改めて自分のいる標高を実感する・・・。
ザレた下りを慎重に下りる。
穂高岳山荘が見えてきた頃、梯子の連続となる・・・。
午後3時、穂高岳山荘着。
朝6時に岳沢ヒュッテを出てから9時間、長かった重太郎新道、吊尾根ルートは終わった・・・。
途中の休憩やすれ違い待ちのタイムロスはあったにせよ、予定よりも2時間遅れの到着である。
北穂までの縦走など夢のまた夢であった・・・。
北穂高小屋のポークソテーが無性に食べたくなった・・・。
そそくさと宿泊手続きをすることにする。
山荘はこの時点で混雑の模様・・・。
先週までの天候不順を嫌い、一気に登山者が穂高を目指したのかもしれない・・・。
穂高岳山荘
1泊2食付¥8500
ザックを降ろし一息つく。
テラスからは常念、蝶、そして前穂・・・。
本当に歩き通したのだ。
心地良い疲れが全身を覆う・・・。
宿泊者には部屋番号が書かれた宿泊カードが渡される。
良い記念になる・・・。
やはり今晩は混みそうな雰囲気・・・。
同じ部屋の有志を募り、個室をキープした。
一人1700円の負担で、布団を一枚使うことができるからだ。
笠ガ岳という名の部屋へ6人で入ることにする。
知らないおじさんと一緒に同じ布団で寝るのは死んでも嫌だ・・・。
同宿の皆さん・・・。
山のベテランばかりで会話も弾む。
いちばん若い加藤氏(右)はJN1GFYのコールサインを持つアマチュア無線局でもある。
彼も最近、銀塩カメラからデジカメに鞍替えをしたようで、山岳写真におけるデジカメの効用について話が盛り上がる。
明日は僕と逆のコースを辿り、岳沢から上高地へ向かう・・・。
午後5時30分、夕食の時間。
穂高岳山荘の食事は美味しい。
本当はビールでも飲みたいところだが、北穂まで進めなかった自分への戒めのため、断酒とした・・・。
夕食の後、テラスへ出てみた。
ガスがどんどんと昇っている。
表銀座の稜線やゴジラの背も見え難くなった・・・。
涸沢岳のピークは目の前だ。
明日の朝、登る事にする・・・。
部屋の窓から沈む夕日を眺め、持ってきた本多勝一のルポを読んでいたらいつの間にやら眠ってしまったようだ。
Zzz・・・。
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