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槍ヶ岳その1からの続き
昨夜は何度も目が覚めた。
屋根のトタンを叩く雨の音を聞きながら・・・。
午前6時、朝食。
しっかりと3杯お代わりをした・・・。
朝食を済ませると、お客さん達はカッパを着込んで勇ましく出発していった・・・。
なかには天候の悪化を予想し、Uターンをして上高地に下山をするパーティーもいた。
賢明な選択かもしれない・・・。
僕らの今日の行程では、特に急ぐ事もないので、午前7時にゆっくりと出発した。
出発する前は、かなりの強い降りだった雨も、今は「霧ション」状態。
ぴょん子隊員はカッパを着込んだが、僕はカッパを着ずに出かけることにした・・・。
午前7時30分、ババ平着。
昔の槍沢小屋跡である。
テント指定地であるババ平も大盛況。
さすがは3連休である・・・。
所狭しとならんだテントの間を抜けて槍沢を歩く。
天狗の分岐に到着。
お天気が良かったなら、天狗池から南岳へ登り返し、中岳、大喰岳を縦走し、槍のピークを踏む事も考えていたのだが・・・。
天狗池の「逆さ槍」は、次回の楽しみに取っておこう。
しばらく歩くと、現在のヒュッテ大槍の水場である、大槍小屋跡に出る。
大槍常駐時には、この水場と大槍との間を何往復もした懐かしい場所だ。
小屋と無線連絡を取りながら、ポンプアップ作業を必死に行っていた頃が懐かしい・・・。
坊主岩の分岐から、ヒュッテ大槍方面へ進む。
槍沢からの一般登山者の場合、通常は槍ヶ岳山荘や殺生ヒュッテへ進むケースがほとんどで、大槍まで登る人は少ない。
今日も例外ではなく、僕らの先行のパーティーが一組だけ、大槍方面へ登っている姿が確認できるだけである・・・。
坊主の分岐から大槍までの急登は、相変わらずである。
こんな急登を、30キロ、40キロのポンプの部品を担いで登ったり、黒パイプを懸命に巻き取ったりしたことが信じられない・・・。
あのパワーは一体どこから来ていたのだろう・・・。
途中で休んでいた先行のパーティーを抜いた。
しばらく急登に喘ぎながら進むと、ディーゼルエンジンの音が聞こえてきた。
「わぁ~、可愛い小屋♪」。
初めてのヒュッテ大槍を見た、ぴょん子隊員の感想である・・・。
午前10時20分、ヒュッテ大槍に到着。
早速、森支配人のお出迎えを受ける。
落としたてのドリップコーヒーを頂きながら、小屋の中の様子をぴょん子隊員に説明する。
僕らが常駐していた頃の男性的な小屋のイメージから、今は女性的な優しい感じに変貌したヒュッテ大槍。
そんな雰囲気に、始めて訪れたぴょん子隊員も感動してくれたようだ・・・。
槍のピークへのピストンをどうするか考えていたのだが、明日の天候も怪しい。
ガスが濃い状態ではあるが、幸いにも雨は上がっている。
とりあえず、ピークだけは踏んでおこう。
カレーライスをご馳走になり、空身で槍までのピストンに出かける事にした・・・。
ヒュッテ大槍
1泊2食付¥8500
濃霧の中、人気のない東鎌尾根を進む。
槍沢からは、姿の見えない登山者の声が聞こえる。
天上沢に向かってスパッと切れ落ちたナイフエッジを慎重に進む。
大槍から50分ほどで槍ヶ岳山荘が見えてきた・・・。
新しくなった槍ヶ岳山荘から、槍の肩へ進む。
いよいよ、ぴょん子隊員初の槍ヶ岳のピーク登頂だ・・・。
岩場に取り付き、ペンキマークを頼りに上へ上へと進む。
ぴょん子隊員は、垂直にも近い鎖場や梯子の連続に必死に耐えている。
最後の梯子を登り切ると、3180mのピークに出た。
午後1時、槍ヶ岳山頂に到着。
一面のホワイトアウト状態。
お天気が良ければ、360度の大パノラマが広がるのだが・・・。
狭い山頂の端に祠がある。
その後ろは北鎌尾根だ。
僕もぴょん子隊員も大好きな、新田次郎の「孤高の人」の舞台だ。
岩陰に腰を下ろし、北鎌尾根の素晴らしさと怖さなどを話していると、ちょうどクライマーが北鎌を登ってきた。
付近の人全員、拍手で迎える。
あまりのグットタイミングにビックリした・・・。
1時間ほどピークに滞在したのだが、時々青空がのぞき、天上沢や大喰岳方面が開けるパノラマを短時間だが楽しむ事ができた。
展望には恵まれなかったが、日本一人気のある山の山頂に立てた事にぴょん子隊員も満足げだった・・・。
下りは、ちょっと渋滞に挟まれたが、さほどのタイムロスもなく、肩に下りることができた。
新しくなった槍ヶ岳山荘をのぞいてみることにした。
ロビーの雰囲気がガラッと変わっている。
フロントの位置も、以前とは違うようだ。
最近、僕のまねをして、ぴょん子隊員も山バッヂマニアになったようだ。
槍ヶ岳と中岳(平成12年登頂済み)を購入した・・・。
同じルートで大槍に帰るのも芸がない・・・。
殺生ヒュッテ経由で戻る事にした。
殺生の赤い屋根が見えてきた頃、槍沢がガスの間からうっすらと見渡せた。
槍沢のモレーンの雄大さにぴょん子隊員もあらためてビックリしていた。
グリーンバンドの紅葉はまだまだ先のようである・・・。
午後2時50分、殺生ヒュッテに到着する。
懐かしい殺生の支配人、沢田さんや横沢さんに挨拶。
殺生のスタッフとは、水場の黒パイプの設置などを共同で何度も作業をした。
滑落をしたら一巻の終わりである水源地までの急斜面を一緒になって歩いた仲間である。
休憩時間を利用し、15分ほどで到着する殺生まで、よくお土産を持って遊びに行った懐かしい小屋だ。
当時と変わらぬ暖かい歓待の中、コーヒーやお菓子をご馳走になりながら、1時間ほども長居をしてしまった・・・。
大槍に戻ってくると、賑やかなお客さんの声が聞こえてきた。
今日は23人のお客さんがお泊りとの事。
今回、初めて客室に泊めさせて頂く。
以前のボロボロのゴザはなく、新しい畳が入っている。
フカフカの布団もスタッフの天日干しの努力の賜物だ。
いよいよ夕食の時間。
これまた初体験のお客さんの食事を頂く。
スタッフとして常駐していた頃は、「何でこんなご馳走を手間隙掛けて作らなければいけないのか!?」という疑問を持ったこともある。
しかし、お客さんの側から見てみれば、こんな3000m近い標高の山小屋で、これほどのご馳走を食べることができる感動。
白ワインのグラスを傾けながら、あらためて大槍の素晴らしさを実感する。
午後7時30分頃、食事の後片付けの終わったスタッフのみんなと一緒に、差し入れのお酒を飲んだ。
燕山荘から順番に行われるMCA無線の定時連絡を聞きながらの厨房での宴会も懐かしい・・・。
今日は燕山荘や双六小屋のOBの方もみえていて、賑やかな酒宴となった。
お酒が入るほどに乱れ飛ぶ逸話の数々・・・。
中でもお風呂の話は盛り上がった。
苦しい事や辛い事も多かったが、今にして思えばすべて懐かしい思い出である・・・。
配膳台の上に並ぶご馳走を、先の夕食で満腹になったぴょん子隊員が食べる事ができないと嘆いていたのには苦笑・・・。
「いのぢー、元気かなぁ~?」。
※いのぢー:先代のヒュッテ大槍支配人である。
徹底的に仕事を仕込まれた恐ろしく、そして大好きな人。
元フランス料理のシェフ。
現在は、白馬でフライフィッシングガイドとして活躍中・・・。